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なりたま通信所業務日誌


2008-04-21 [Mon]

鉄道の達人(笑)

鉄道の達人 (竹書房文庫)(監修・横見 浩彦) こういう、いかにも「流行りモノ」な書籍に無条件に手を出すのは非常に癪なので、内容を確認のうえ買うかどうか判断せにゃ。少し読んでみて「しょーがねーなぁ」、更に読んで「ダメだコリャ」。というわけで、華麗にスルー……のつもりでしたが、気が変わりました。買って読んだうえで酷評することにします。いい性格してるな俺も。

俺がこのテの雑学本を評価する上でのチェックポイント「デッドセクションについての解説」(P96〜98)は、

「デッドセクション」は「死電区間」または「無電区間」とも呼ばれる、架線に電気が通っていない数十メートルの区間のこと。当然ながらそこを通る電車には電力が供給されないため、一瞬だけ車内灯が消えたりエアコンが停止したりしてしまいます。

と、期待を裏切らないダメっぷり。実際に電車に乗って交直セクション通過を子細に観察すれば、車内灯が消えた後に架線死区間標識が車窓をよぎる(つまり、死電区間の手前の通電されているはずの場所で車内灯が消えている)という事実に気付くはずですが、一体全体どう説明してくれるんでしょうか、鉄道の達人様は。実際に観察できる現象と「日本のデッドセクション」で詳細に解説されている内容を照らし合わせれば、「架線に電気が通っていない」ためではなく「回路切替操作の際にABBを開放し、架線の通電状態に関わらず電源が絶たれた状態となる」ことによるものと判るはずですが、まったく何度言わせれば(ry

まぁこの辺は、凡百の鉄道雑学モノで連綿と繰り返されてきていることなので、今更いちいち驚きはしません。本書も例に漏れないクオリティだというだけのこと。それよりも、P106〜107の記述に度肝を抜かれてしまいました。

(2008-04-22追記:改版時にコソーリ修正されるかも知れないので、証拠保持のため以下に引用)

当時の人々は、以下のように叫んで敷設に反対していました。
「鉄道が走ると、周辺に火の粉が飛んで火事になる」
「機関車が噴き出す煙で農作物が枯れる」
「履き物が売れなくなり、飛脚や人力車の客が取られる」
「若者が街に遊びに行って堕落する……と長老が言っている」
いずれも、現代の感覚では奇異に映ることばかりですが、当時の人たちはこれでも真剣です。とにかく、それまで平穏だった生活を脅かされたくないという気持ちから、各地で猛烈な反対運動が展開されました。そして反対派の意見が通り、ルート変更を強いられた路線は少なくありません。

こいつ「鉄道忌避伝説」信じてるよ!!

鉄道の達人様が得意げに紹介するこれらの「伝説」は、青木栄一著「鉄道忌避伝説の謎−汽車が来た町、来なかった町」により既に否定されています。青木氏の説への反論として述べているならともかく、懐疑論の存在を知りもしないままこれまでの通説を疑いもせず垂れ流している(少なくとも俺にはそう読める)ようでは、不勉強の誹りは免れまい。と言うか、青木氏の指摘する「伝説の再生産」がこうして行われているという実例ですな。

結論としては、巻末に参考資料として挙げたネタ本(これがまた、そこら辺で乱造されている同種の鉄道入門・雑学本のオンパレード)から寄せ集めただけのお手軽な内容に「監修:横見浩彦」のネームバリューを付加して売ろうという魂胆がミエミエの代物。是非とも、買って読んでツッコミましょう(ぉ。