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なりたま通信所業務日誌


2008-04-23 [Wed]

「鉄道の達人」の著者は鉄道忌避伝説虚構論を知っていたのか

先日ネタにした「鉄道の達人」(以下、本書と表記)について、「近年では鉄道忌避伝説が否定されていることを知らないのか」というのが俺の指摘のひとつだったわけですが、改めて見てみると、本書の参考資料の中に青木栄一氏の「鉄道忌避伝説の謎」が挙げられているという驚愕の事実に気付きました。こんな重大なことを見落とすとは、俺もヤキが回ったぜ。

しかしそうなると、本書の謎はますます深くなってしまったり。

「鉄道忌避伝説の謎」を参考資料としたのなら、本書の著者(あえて誰とは言わんが)は「各地に伝わる鉄道忌避の伝説は虚構である」という最近の言説を知っていたことになるはずですが、俺が指摘したように、本文中では鉄道忌避伝説虚構論へは一言も触れず、通説を疑う余地のない事実であるかのような書き方をしています。著者なりに思うところあって、否定論があることを承知のうえで「鉄道忌避は本当にあったのだ」と通説の方を支持しているのかも知れませんが、それならば伝説否定論の代表たる青木氏の著書を参考資料に挙げる理由が分かりません。せめて「近年では否定論も言われているようだが、それでも鉄道忌避は本当にあったと筆者は考える」と、両論併記のうえで自身の見解を述べているのであれば理解できるのですが、そうでないから謎が謎を呼ぶ。この辺、小一時間どころか三日三晩ほど著者を問い詰めて真意を聞きたいですな。

ひとつ可能性として考えられるのは、本書の著者は実のところ「鉄道忌避伝説の謎」を全く読んでおらず、各地に伝わる鉄道忌避伝説を紹介する本と勘違いして書名だけ拝借した、てなところ。いやまさかそれはないだろうと思いたいですが、ひょっとしたらそのまさかかも知れないと思わせるだけのクオリティに満ちているのは確か。

結論としては、素人が読むと伝説を再生産してしまい、識者が読むと謎だらけというトンデモ本である、と判断いたします。「監修:横見浩彦」に釣られて買う人も少なくないと思われる本書ですが、潜む「罠」を明らかにできただけでも、わざわざ買って内容を確認した意味があるというものですな、俺としては。