2009-02-28 [Sat]
■ 配線略図で広がる鉄の世界
電車 (気動車でも可) で先頭車両に乗ると、ついつい運転台直後からの前方風景に目がいってしまうのは誰しも経験のあることかと思いますが、俺の場合、線路配線や線形を観察するのがお気に入り。線路が複雑に分岐・交差する様を眺めるだけでもハァハァ心躍るし、一見使用頻度の低そうな分岐や渡り線の存在にどのような意図があるのかを考察してみるのも楽しいもの。
本書は、実際の線路配線を略図で図示しつつ、様々な配線のメリット・デメリットを解説する、これまであまりお目にかかれなかったジャンルの鉄道書。単なる配線例の紹介でなく、配線が運転に及ぼす影響という視点での解説です。実際の配線を数多くケーススタディとしているだけに、理想論だけでなく現実の制約 (用地とか費用とか) という視点を忘れていないところにも好感が持てます。
著者の井上孝司さんとは少々面識があるのですが、実際の配線を実地で観察し自ら配線略図を描いたうえで考察を加えられているらしい。掲載写真も、約一点を除いて*1自身で撮影されたもの。やはり実地検分は大事ですな。そしてその行動力と観察力と洞察力は大いに見習いたいものです。
列車は線路の上を走る (そして、線路の上しか走れない) ものゆえ、配線の良し悪しは列車運行の利便に直結します。運転やダイヤに関心のある向きならば、配線にも注目すべし。そして常日頃から配線を観察して眼力を養っておきたい。配線観察するうえでの視点をまとめたものとして、本書は (これまで類書がなかったこともありますが) 配線ウォッチャー必携でせう。
*1 よく見てみると分かりますが、その「約一点」は俺が提供したものだったりします。おかげさまで、サイン入りで献本していただくという一素人としては珍しい (俺としてはもちろん初めての) 経験をさせていただきました。真にありがとうございます。